#ハイパーヨーヨー
#ヨーヨー
#競技ヨーヨー
小学5年生の息子が夢中になっている「ヨーヨー」。
昔ながらの木製おもちゃというイメージを持つ方も多いかもしれませんが、
今のヨーヨーは独自の進化を遂げ、奥深い競技カルチャーへと変貌しています。
知られざる現代ヨーヨーの世界をご紹介します。
プロデューサー/ディレクター 山本 信幸(やまもと のぶゆき)
小学五年生の息子が、いまヨーヨーに夢中だ。朝起きてから、学校から帰って夜寝るまで、部屋で常にヨーヨーを振っている。「振っている」というのはヨーヨー業界のことばです。「最近ヨーヨー振っていないなあ」とか、ヨーヨーの専門店に行ってサンプルを試したい時に、「〇〇を振っていいですか?」というかんじで使う。何度も同じ技を繰り返し見ていると、最初は「あやとり」みたいに見えていたものが、だんだんと技がわかってくる。1回回して、糸(ヨーヨー業界ではストリングという)にヨーヨーをのせる技が「トラピーズ(基本です)」。ヨーヨーを地面と水平に回すのが「ホリゾンタル」。息子は、少しずつ技が成功する感覚が面白いようで、YouTubeを見ながら研究し、休日には練習会にも出かけている。
ヨーヨーというと、多くの人は昔ながらの木製のおもちゃを思い浮かべるかもしれない。糸の先で上下させるだけの単純な遊び。しかし、日本のヨーヨー文化は、実はかなり独特な進化を遂げてきた。
転機になったのは、アメリカンヨーヨーの流入だ。いわゆる「犬の散歩(ウォーク・ザ・ドッグ)」のように、ヨーヨーを地面で走らせたり、長く空転させたりするスタイルが広まり、単なる玩具から「技を競う道具」へと変わっていった。そして1990年代後半、バンダイの「ハイパーヨーヨー」が爆発的なブームを起こす。学校でも公園でも、ヨーヨーを持った子どもたちが技を競い合っていた。当時を覚えている人も多いだろう。
しかし興味深いのは、そのブームが一過性では終わらなかったことだ。ブームが去ったあとも、一部の子どもたちはヨーヨーを続けていた。そして、その世代が現在の競技ヨーヨー文化を支えている。
今のヨーヨーは、もはや昔の遊びとは別物と言っていい。競技は1Aから5Aまで五つのクラスに分かれている。1Aは一般的な一個のヨーヨーを使うスタイル。2Aは二個を使ったルーピング。3Aは二個のヨーヨーを両手で操り、糸を複雑に絡ませる。4Aは糸と本体が分離する「オフストリング」。5Aはカウンターウェイト付きで、糸の端に重りをつけて操る。
以下、すべてyoyovideoarchiveのYouTube動画です。
1つのヨーヨーを使用しての行う
2つのルーピングヨーヨーを使用して行う
ルーピングヨーヨーとはヨーヨーが円軌道を描くスタイルに向いたヨーヨー
2つのヨーヨーを使用して行う
オフストリング(糸とヨーヨーがつながっていない)ヨーヨーを使用して行う
糸に指をつけずに代わりに「おもり」をつけたヨーヨーを使用
実際に映像を見ると、「何かものすごいことをやっている」のは分かる。しかし細かい部分は、正直ほとんど理解できない。ヨーヨーが糸の上を滑り、空中で交差し、腕や背中を通り、また戻ってくる。その動きは、もはやジャグリングやダンスに近い。経験者は「今の技はすごい」と盛り上がるのだが、素人にはどこが難しいのかすら分からない。これはフェンシングや柔道、ボクシングの高度な駆け引きを、未経験者が見ても理解しにくいのと似ている
それでも世界には熱狂的なコミュニティが存在する。日本は昔から強豪国で、世界大会優勝者も数多い。韓国、中国、アメリカ、フィリピン、マレーシア、シンガポール、チェコなども盛んで、世界大会では各国のトッププレイヤーが集まる。ちなみに、今年は日本で世界大会が開催される。
しかも競技人口が巨大というわけではない。むしろかなりマイナーな世界だ。息子の学校でも、ヨーヨーをやっている子はほとんどいない。それでもSNSで近所の練習会を探し、親子で電車に乗って参加している。
初めて練習会に行ったとき、私は少し驚いた。もっと賑やかなイベントを想像していたのだが、実際はかなり静かだった。参加者たちは公園や会場で黙々と練習している。必要があれば「その技、教えてください」と声をかけ、上手い人が自然に教える。初心者講習の時間もあるが、それ以外は基本的に各自練習。集団ではいるが、個々に技を極めていく、求道者の集団ようである。もちろん交流はあるものの、みんな一心不乱にヨーヨーを振っている。
そこには世界レベルの選手が普通にいたりする。スポンサーが付いている人もいる。しかし、ヨーヨーだけで食べているわけではない。大会運営も、多くは手弁当だ。受付はボランティア、審判も最低限の交通費程度。それでも競技文化が維持されているのは、「好きだから続けている」という熱量があるからなのだろう。
ヨーヨーは、将来の役に立つのかと言われれば、正直よく分からない。プロ大道芸人になるのでなければ、直接的な職業スキルになるわけでもない。ただ、ひとつの技を何百回も練習し、少しずつ成功率を上げていく姿を見ていると、単なる遊び以上の価値はある気がする。上手い人に教わり、自分よりすごい世界を見る。その積み重ねは、案外いろいろなことにつながるのかもしれない。
そして個人的には、もう一度日本でヨーヨーブームが来ても面白いと思っている。世界から「日本人はヨーヨーが異様に上手い国民だ」と思われる未来は、少し滑稽で、でも悪くない。大道芸人のような技術を持った人たちが街中にいて、子どもたちが公園で高度なトリックを練習している。そんな光景は、どこか平和で楽しそうだ。
息子のヨーヨーを眺めながら、そんなことを考えている。
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