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#019_パブリックドメインの落とし穴(後編:音楽編)
2026.07.29
#019_パブリックドメインの落とし穴(後編:音楽編)

#パブリックドメイン

#著作権

「クラシック曲なら動画や店舗でそのまま使える」の思い込みは危険!
YouTubeの警告や想定外の請求など、
音楽のパブリックドメイン利用に潜む具体的なトラブル事例と、
実務での調べ方を制作進行の池部が解説します。

音楽利用に潜む「4つの罠」と具体的トラブル事例

前編では「絵画」「画像」「出版物」を取り上げ、著作権が消滅していても存在する「管理組織の目」や「撮影・複写にまつわる新たな権利」について解説しました。                   

後編となる今回は、映像制作や配信、あるいはイベントなどの実務において、さらに複雑で深刻なトラブルに発展しやすい「音楽」のパブリックドメイン(PD)利用について深掘りします。

「バッハやモーツァルトなら、著作権が切れているから動画のBGMや店舗のBGMにそのまま使えるはず」もし、そう思い込んでいるなら、それは非常に危険です。音楽のパブリックドメインでよく起こる問題は、「原曲の著作権は切れていても、特定の音源や歌詞、アレンジには別の権利が存在する」という事実を見落とし、「すべて自由に使える」と思い込んでしまう誤解に起因するものがほとんどです。実務者が絶対に知っておくべき具体的なトラブル事例と「4つの罠」を解説します。

1. 既存音源の「著作隣接権(原盤権)」侵害

たとえ作曲者の死後70年が経過し、メロディ(楽曲自体)の著作権が消滅していても、その楽曲を演奏・録音した音源には「著作隣接権(レコード製作者の権利や実演家の権利)」が存在します。

よくあるトラブル事例: 誰もが知る古いクラシック交響曲の市販CD音源を、動画のBGMに無断で使用したところ、YouTubeなどの動画配信サイトの自動識別システム(Content IDなど)によって著作権侵害と判定され、動画の公開停止や収益化の剥奪、最悪の場合は動画が削除されるケースがあります。

実務での対策: 楽曲自体がPDであることを確認した上で、「自分たちで新しく演奏・録音し直す(生演奏やDTMなど)」か、「PD楽曲を演奏したことが保証されており、商業利用が許可されている信頼できるフリー音源素材」を使用する必要があります。

2. 「編曲」や「訳詞」による新たな権利の発生

パブリックドメインの楽曲を利用して作られた、新しい創作物(二次的著作物)には、元歌とは別に新たな著作権が発生します。ここを見落とすと、思わぬ権利侵害に繋がります。

よくあるトラブル事例: 海外の民謡や古いクラシック曲に、後から日本人が編曲や日本語の訳詞を施した楽譜や音源を「原曲が古いから大丈夫だろう」と利用した際、その編曲者や訳詞者の権利(JASRAC管理など)を侵害してしまい、想定外の著作権料を請求されるケースです。メロディは古くても、歌唱されている歌詞や現代的なアレンジの著作権は生きているケースが多々あります。

3. 国による保護期間の違い

著作権の保護期間や法制度は、国によって一律ではありません。現在の日本では基本的に「著作者の死後70年」ですが、国や地域によっては50年であったり、それ以上の期間が設定されている場合があります。

よくあるトラブル事例: インターネットを通じて海外の「パブリックドメイン・フリー素材サイト」から音楽をダウンロードし、日本国内向けの商用動画や配信で利用したところ、提供元の国ではPDであっても「日本ではまだ保護期間内(著作権が存続している)」であり、国内で著作権侵害を問われてしまうケースです。グローバルなネット配信を前提とする場合は、特に注意が必要です。

4. アレンジ版(カバー曲)と著作権の混同

有名な楽曲のPD音源を探す際、現代のアーティストがアレンジ・カバーした音源を、原曲のPDと混同して使用してしまうトラブルも後を絶ちません。

よくあるトラブル事例: 「著作権フリー」と謳う個人のWebサイトやSNSからダウンロードしたクラシック曲の音源が、実は出所が怪しく、実際には現代のアーティストが違法にコピー・配信したアレンジ音源(カバー曲)だったというケースです。この場合も、当然ながら配信サイトでの警告や権利者からの訴えを起こされるリスクがあります。

・忘れがちな「著作者人格権」の配慮

著作権(財産権)の保護期間が切れて財産としての権利は公有(パブリックドメイン)になっても、著作者個人に帰属する「著作者人格権(氏名表示権や同一性保持権など)」は消滅しません。

著作権法上、著作者が死亡した後であっても、「著作者が生存しているとしたら、その人格権を侵害するような行為をしてはならない」と定められています。原曲のイメージを著しく歪めるような不適切な改変を行って著作者の名誉を傷つけたり、著作者の名前を偽って表記・発表したりすると、遺族などから差し止めや損害賠償を請求されるリスクがあります。

・確実な対策の第一歩:権利管理団体のデータベースで検索する

こうした「パブリックドメインの罠」に陥らないための最も確実な対策は、使用する前に国内の権利管理団体のデータベースを利用して、該当の楽曲や音源が管理下におかれていないかを確認することです。リサーチの実務では、以下の検索システムを必ず活用します。

・JASRAC作品データベース検索「J-WID」
https://www2.jasrac.or.jp/eJwid/
国内で最も大きな音楽著作権管理団体であるJASRACのデータベースです。信託状況や、作詞・作曲・編曲者ごとの権利状況、パブリックドメイン(PD)扱いになっているかを直接調べることができます。

・NexTone(ネクストーン)作品検索
https://search.nextone-inc.jp/
近年、多くの商業音楽や人気アーティストの楽曲管理を担っているNexToneの作品データベースです。JASRACと併せて検索することで、より網羅的に権利状況を把握できます。

正しい知識とリサーチで、安全なコンテンツ制作を

前後編にわたり「パブリックドメインの落とし穴」を解説してきました。 一見、自由に使える便利なフリー素材に見えるものでも、商業ビジネスの現場においては、その背景にある「所蔵権」「原盤権」「二次的著作物」など、何重もの権利の糸を丁寧に解きほぐすリサーチが不可欠です。

パブリックドメインは、決して「万能のフリーパス」ではありません。しかし、正しい知識を持って向き合えば、過去の偉大な文化遺産を現代のクリエイティブに活かす強力な武器になります。

私たちライツ社は、映像・音声コンテンツのプロフェッショナルとして、これからも確実な権利クリアランスを徹底し、安全でハイクオリティなコンテンツを世に送り出してまいります。

映像コンテンツ、イベントなどでの権利処理や楽曲リサーチに不安がある方は、ぜひお気軽に弊社までご相談ください。

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