#チーム編成
#座組
#映像制作
良い作品を生むために必要なのは、突出した能力以上に「座組」の調和にある。長年の映像制作で辿り着いた、チームが自然に機能し、クオリティを高めるための本質を語ります。
CCO/クリエイティブディレクター/プロデューサー 上田 勝巳(うえだ かつみ)
最近思ったとりとめもない話しです。映像の企画や制作を長くやっていると、作品の出来を左右するものは何だろう、と何度も考えます。企画力なのか、演出なのか、予算の多さなのか。もちろんどれも大事なのですが、いまのところ自分の中でいちばんしっくりきている答えは、やっぱり座組です。
ここでいう座組は、すごい人をそろえることではありません。もちろん能力の高い人がいるに越したことはないのですが、そういうことよりも、一般的な能力を持った人たちが、ちゃんと機能する位置にいることのほうが、案外大きい。誰が前に出るか、誰が支えるか、誰に判断を預けるか。その組み方がうまくはまると、現場は驚くほど穏やかに前へ進みます。無理に頑張らなくても流れができるし、余計な摩擦が減るので、結果的にクオリティも上がっていく。最近は、そこにプロジェクトの本質があるのではないかと思っています。
昔は、少し違う見方をしていました。優秀な人が何人かいて、その人たちが力を発揮すれば、多少条件が厳しくても乗り切れるのではないか、と。実際、そういう場面もあったと思います。でも長く続けていると、それはかなり危うい成り立ち方だったのだとわかってきます。誰かの頑張りや我慢で成立している現場は、一見うまくいっているようでも、どこかに無理がたまっていく。その無理は、すぐには表に出ないこともありますが、少しずつ進行の遅れや判断の雑さや、ちょっとした行き違いになって現れてきます。最初は小さなほころびでも、それが積み重なると、最後に大きな負担になって返ってくるんですね。
だから最近は、目立つ能力よりも、持ち場に合っていることのほうを気にするようになりました。この人は派手ではないけれど、進行を安定させる。あの人は前に出るタイプではないけれど、全体の抜け漏れを防いでくれる。そういう一人ひとりの役割が自然につながると、チームには変な無理がなくなります。相談がしやすくなり、確認も早くなり、必要なときにブレーキを踏めるようになる。そうなると、単に作業が進むだけではなく、みんなの頭がちゃんと作品に向くようになる気がします。現場が混乱しているときは、どうしても火消しばかりに追われますが、流れが整っている現場では、細部をよくするための時間や気持ちが残る。その差は大きいと思います。
ただ、座組がよければすべて解決するわけではありません。その後の環境整備が本当に大事です。むしろ、そこを整えないと、せっかくの座組が機能しなくなる。プロジェクトには予算、リソース、時間という三つの要素があるとよく言われますが、この三つのバランスを見る目が必要なんですね。どれかが足りなければ、残りで補うしかない。でも補い方を間違えると、現場に無理がたまる。予算を削れば利益がなくなり、人手を削れば健康を損ない、時間を削れば納期に追われる。当たり前のことなのに、実際の現場ではその当たり前を守るのがとても難しい。だからこそ、そこにセンスが出るのだろうなと思っています。
この三つは、切り離して考えられないのだと思います。たとえば予算が限られているなら、そのぶん時間に少し余裕を持たせるとか、やること自体を絞る必要がある。時間がないなら、人数を増やすか、判断の回数を減らせるような準備がいる。リソースが薄いのに、予算も時間も増やせないとなると、どこかで企画の規模や方法を見直さないと、どうしても人に負荷が集まってしまいます。つまり、何かが足りないこと自体が問題なのではなく、その不足をどう扱うかが問われるのだと思います。そこを曖昧にしたまま走り出すと、現場は後から苦しくなる。逆に、最初の段階で不足を不足としてきちんと見て、何で補うかを丁寧に決めておけば、厳しい条件でも意外に持ちこたえられることがある。その違いは、やってみると本当に大きいです。
この歳になってようやく、プロジェクトを前に進めるというのは、勢いだけではないのだとわかってきました。もちろん勢いは大事ですし、最後は気力に助けられる場面もあります。でも、本当に現場を支えているのは、一部の人の頑張りではなく、座組と環境整備の積み重ねなんだろうと思います。人の配置をどう考えるか。予算とリソースと時間のバランスをどう見るか。そういう一見地味なところに、実はプロジェクト全体の質が静かに表れてくる。最近はそんなことを、以前よりずっと真剣に考えるようになりました。
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