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NHK Eテレ「スコラ 坂本龍一 音楽の学校」を例に、
名作番組の再放送やDVD化を阻む「権利処理」の裏側、
放送と二次利用で異なる著作権の仕組みや、シンクロ権の壁に迫ります。
制作進行/プロデューサー 池部 博哉(いけべ ひろや)
テレビ番組で膨大な楽曲を流せるのは、
NHKや民放各局がJASRAC(日本音楽著作権協会)や
Nextoneなどの著作権管理団体と「包括契約」を結んでいるからです。
かつてこの方式は、他事業者の参入を阻むものとして
独占禁止法違反が争われた歴史もありますが、
現在は大量の楽曲をスムーズに扱うための、
世界的に見ても効率的なシステムとして運用されています。
ところが、番組をDVD化したり、ネットでオンデマンド配信したりしようとすると、
この「包括契約」の魔法は解けてしまいます。
これらは「放送」ではなく、ビデオグラム化や公衆送信という
別の権利が整理されるべき領域だからです。
ここで立ちはだかるのが、映像と音楽を固定させる権利、
通称「シンクロ権(同期権)」です。
「放送」は、一過性の利用を前提とした効率的なルール(包括契約)のおかげで、
豊かな音楽体験を届けることができます。
しかし、それを「パッケージ」として永続的に残そうとした途端、
アナログで膨大な「個別交渉」の積み上げが必要になります。
この放送と二次利用のギャップこそが、
多くの名作音楽番組が棚に眠ったままになってしまう最大の理由です。
また、当然ながら楽曲だけでなく、
番組中に使用する資料映像や画像についても権利者との交渉は欠かせません。
ここで意外と知られていないのが、
フォトストックサービス(アフロ、ゲッティ、アマナなど)の仕組みです。
サービスに登録されている写真の権利を、各社が永続的に保持しているとは限りません。
例えば、写真家やその管理者が作品の委託先を一定期間で見直すケースは珍しくないのです。
そのため、初回の制作時から時間が経って再放送や二次利用を検討しようとすると、
「かつての窓口が現在は取り扱っていない」という事態が頻発します。
改めて、今どこが権利の窓口なのかを調査・特定し、一から交渉し直さなければなりません。
この「窓口の追跡」という目に見えない調査作業もまた、番組をアーカイブする際の大きな障壁となっています。
・・・
実は、Eテレ「スコラ 坂本龍一 音楽の学校」からは、スタジオライブをセレクトし、
一部ディレクターズカットや特典映像を収録したパッケージが2タイトル販売されています。
スタジオライブは、資料映像,画像は使用していないので、
収録曲数分の権利について調査し、交渉することは
番組全ての権利処理するよりはシンプルです。
commmons schola: Live on Television vol. 1 Ryuichi Sakamoto Selections: schola TV
commmons schola: Live on Television vol. 2 Ryuichi Sakamoto Selections: schola TV
しかし、Yellow Magic OrchestraがThe Beatlesの「Hello, Goodbye」をカバーした
貴重なパフォーマンスを収録することは叶いませんでした。
理由は、商品の販売想定数や販売価格に対して、
提示された許諾料があまりにも高額で、採算が見合わなかったためです。
表現として「最高のもの」であっても、
経済的な合理性の前で断念せざるを得ない。
これが権利処理の現場で直面する厳しい現実です。
2025年3月に放送した「坂本龍一のRadio Schola」(NHK FM)は、
あえて「映像(シンクロ権)」を伴わない「音声コンテンツ」という形を選択しました。
これも、複雑な権利の糸を解き、
坂本龍一さんが残した知見を今の時代に届けるための、
一つの現実的な解法だったのです。
制作進行の役割は、クリエイターの「表現したい」という情熱を、
こうした法的な現実の中に着地させることです。
包括契約の恩恵に感謝しつつも、
二次利用を見据えた際に直面する「幾重にも重なる権利のレイヤー」をどう丁寧に解きほぐし、
次世代へ繋げるか。私たちは常に最新の権利情報をアップデートしながら、
時を経ても色褪せない「残る作品」を模索しています。
「作る」ことと「残す」こと。
この二つの間にある溝を埋めることも、
現代の映像プロデューサー・制作進行に求められる、大切な技術の一つだと考えています。
映像制作における権利処理や、ライセンスを考慮したコンテンツ企画、
オリジナル音源制作、音楽出版のご相談も承っております。
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